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今回紹介する書籍は『電子書籍で生き残る技術』です。
オーム社様よりご提供いただきました、ありがとうございます。

概要


電子書籍の時代が訪れようとしているにも関わらず、決定的なフォーマットはまだ確定しておらず、先行き不透明な状況である。
本書では、電子書籍がどのような形式に決まろうとも、対応できるようにしておくための方法を紹介している。
また、電子書籍の知識がない人のための全体像を概観するための読み物としても有用である。


目次


第1章 電子書籍、群雄割拠時代の到来
第2章 電子書籍がたどってきた道
第3章 電子書籍で利用されている技術
第4章 電子書籍で生き残るための技術
エピローグ 電子書籍で生き残るために


ポイント


・ワンソースマルチフォーマット
電子書籍のフォーマットはXMDF、.book、EPUB、AZW、PDF、JPEGなど様々なものが乱立している状況である。
今後はこれらのどれに対応していけばいいのか?その答えは「主要なものはすべて選択し対応する」だ。
しかしそれには多大なコストがかかる事は明らか。
対策としては各フォーマットに変換するための中間フォーマットを用意する事が考えられ、そのための施策が行われているが、まだまだ課題も多い。
今後の電子書籍の普及、各種サービスの展開、そのコストなどの推移を注視していくしかない状況である。(要約)

・バージョン管理システムで版管理を行う
バージョン管理システムを使うと、「誰が」、「どのタイミングで」、「どこを修正したか」などの履歴を保持することができる。
多人数の関係者が遠隔地にいながら同時に校正を行うことができ、原稿の送付作業も不要になるというメリットがあるため、効率的に作業を行う事ができる。(要約)


感想


電子書籍に関しては様々な点で混沌としている状況なので、リーダーやプラットフォーム、フォーマットについて今後どのようになるか名言はされていません。
しかし、電子書籍というものの全体像を知るには適している書籍であると思います。

個人的に興味深かったのは、IT業界でよく使われているバージョン管理システムを本の編集に利用している点。
データだけでなく製作工程も今後一気にIT化が進むかもしれません。

そしてGoogleの電子書籍販売サービス「Googleエディション」からも目が離せないですね。
今年は電子書籍に大きな動きが出てくるかもしれません。


蛇足ですが、ちょっとびっくりしたデータをひとつ紹介します。

電子書籍の日本国内の2009年の売上高は574億円(『出版月報』2010年1月)で、前年比23.7%増と成長著しい。
2009年の米国の電子書籍売上高は3億1300万ドル(約266億円 1ドル=85円計算、全米出版社協会の調査)なので、実に倍以上の市場規模だ。
そのうちの513億円は携帯電話向けコンテンツの売上げになる。さらにその約8割がコミックで、またのその一番の売れ筋は、成人用コミック、ボーイズラブなどのコンテンツである。


まあ最初はこんな感じでスタートしていくものなのかもなぁ、と思いつつ他の分野の成長も望みたいと思う次第です。


あと、私自身の紙と電子版の使い分けですが、今のところビジネス書に関しては紙で読みたいと思っています。

紙の良いところはまず、読むページを容易に変えられるという点。
私はまず表紙や帯を見て雰囲気をつかみ、著者略歴を読んでから目次に目を通します。
それから本文をパラパラめくって全体像をつかんでいくのですが、このような読み方を電子書籍でやるのは少々面倒です。
さらに、複数の本を読み比べたり、家の中のあちこちに本を置いてすぐ読めるようにしたりできるのも、紙ならではの利点です。

しかし、辞書や図鑑等は携帯性の面から電子化するべきだと思いますし、旅行や長時間の移動の際に大量の小説を持ち歩くのも電子データの方が圧倒的に楽です。
そういった面からも今後電子書籍の需要はますます増えていくでしょうし、今後の動向に目が離せません。

今年はどのような動きがあるか楽しみです。

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