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IKEA
Ikea funabashi / Jmho

新店舗オープン前の敷地内に、渡り鳥が巣をかけた。
≪家が世界でいちばん大切な場所≫を掲げる彼らはいった。
「渡り鳥のマイホームを撤去して営業するわけにはいかない。
たった数カ月、オープンを遅らせればいいだけだ」

普通に考えるとありえない判断ですが、イケアからすると当然のこと。
なぜこのような考え方が浸透しているのか、そしてなぜこのような経営で業績を伸ばし続けているのか、書籍「イケアはなぜ「理念」で業績を伸ばせるのか 」の内容を元にご紹介していきます。


イケアが世界一の家具チェーンになれた理由


創業者イングヴァル・カンプラード氏の価値観を反映した企業理念と、理念を具体的な10項目で表現した「イケア・バリュー(イケアの価値観)」が浸透しており、強い組織づくりに成功している。

本書ではイケア成功の理由は、この理念経営にあると述べられています。
ではイケアの企業理念とイケア・バリューとはどのようなものなのでしょうか。

・企業理念
「より快適な毎日を、より多くの方々に」

北欧らしいおしゃれなインテリアアイテムは「より快適な毎日」に結びつき、庶民でも手がとどく低価格の商品だからこそ、「より多くの方々」に楽しんでもらえる。
大量生産でコストを下げ、市場より安い価格で販売し、売れ筋商品をさらに値下げして販売量を増やすというビジネスモデルを端的に象徴している。(p.34)

このシンプルな企業理念にイケアのあるべき姿が宣言されています。そして従業員(イケアではコワーカーと呼ぶ)全員がこの企業理念を知っています。

そして重要なのはただ単に知っているというだけではなく、そこに込められた意味や背景までを理解していること。自分たちがどういったターゲットに対して、どういう価値を提供しているのかをしっかり理解しているのです。


・ビジネス理念
「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニシング製品を幅広く取り揃え、
より多くの方々にご購入いただけるようできるかぎり手頃な価格でご提供すること」

つまり、低価格でもダサいデザインの商品はNGであり、洗練されたデザインであってもコストが下げられなければ意味がない。
機能的でない安かろう・悪かろうの商品も却下される。(p.37)

イケアでは企業理念だけではなく、利益をどうやって得るかという「ビジネス理念」も設けられています。ビジネス理念が明確になっているので商品開発にブレがない、従業員も迷いがなく、消費者も安心できる。これがビジネス理念を設ける利点なのでしょう。


・イケア・バリュー
- 自らが手本となること
- 常に刷新を求める
- 連帯感と熱意
- コスト意識を持つ
- 現実を直視する
- 謙虚さと意志力
- 違うやり方でやってみる
- 責任を担い、委任する
- 簡潔
- いつでも「目標へと続く道の途上」

単なる標語ではなく、実践的な内容に落とし込まれているのがわかる。
インタビューの中で「バリュー」について聞いてみると、全員が自分の言葉で説明してくれたし、イケアのコワーカーとしての常識、あるいは心得として、毎日の仕事の中で強く意識されている存在だと語った。(p.40)

企業理念を具体的に落とし込んだ「指針」があることも、強い組織づくりに貢献しているようです。
そして日常業務の中でも引き合いに出されることが多く、しっかりと仕事に活かされていることが伺えます。

もしこれらが浸透していなければ、渡り鳥の巣のエピソードは大きな波乱を呼んでいたでしょう。



理念が浸透する仕組み


世界に約300店舗、14万人が働く巨大企業イケアにおいて、理念を浸透させることは並大抵のことではないと思います。

これだけの人数に理念を浸透させるためにどのような工夫をしているのか、そのポイントについて本書から3つをピックアップしてご紹介します。

・レポートライン

イケアでは、直属の上司との関係を「レポートライン」と呼ぶ。
たとえば、ストアマネージャー(店長)のレポートラインは社長、デパートメントヘッド(部門長)のレポートラインはストアマネージャー(店長)になる。
このレポートラインのつながりが非常に強いことがイケアの特徴である。(p.143)

イケアのレポートラインを通じたコミュニケーションでは、単に指示を出す人と受ける人というビジネスライクな関係ではなく、1対1の人間同士としての対話が重視されています。

日頃からしっかりコミュニケーションが取れているので「◯◯さんでないと分からない」というようなブラックボックスはなくなり、長期休暇の取りやすい働きやすい風土になっているようです。


・ワントゥワントーク

イケアのチームワークに欠かせないのが、レポートラインの関係にあるコワーカー同士が1対1で話し合う「ワントゥワントーク」だ。(p.146)

カンプラード氏が一人ひとりの従業員に対して対話ができれば理想ですが、巨大グローバル企業となったイケアでは到底無理な話。
しかし、ワントゥワントークが至る所で行われており、その中でカンプラード氏の教えがしっかりと共有されているのです。

大事なのは対面で話すということ。イケアでは「NOメールDAY」が設けられている店舗もあり、メールでのコミュニケーションは必要最低限におさえられています。
イケア・ジャパン2代目社長のラース・ペーテルソンは、毎月各店舗のストアマネージャーと2時間にもおよぶワントゥワントークを実施していたそうです。


・ウォーキングマネジメント

イケアでは「ウォーキングマネジメント」と呼んでいるが、マネージャーも積極的に身体を動かしてコワーカーと一緒に働き、コミュニケーションを取ることが推奨される。オフィスでデスクに向かうよりもはるかに情報が得られ、発見も多いからだ。(p.163)

経営層が会議室で話し合って物事を決めるのではなく、現場でのコミュニケーションを通じてボトムアップで提案がおこなわれています。
会議をする際には現場のパートタイマーも呼ばれて、意見を述べることも多いのだとか。この徹底した現場主義もイケア躍進の秘訣なのでしょう。


この本を通じて改めて感じたのは、対面でのコミュニケーションの大切さです。

組織が小さいうちはできていたとしても、従業員が増えていくにつれて希薄になっていきがちだと思います。
イケアでは創業者対従業員の1対多のコミュニケーションではなく、現場のあちこちで1対1の直接対話が行われることで、理念が共有される仕組みを構築しています。

理念が飾り物になっていて想いが伝わっていないと感じている経営者をはじめ、管理職、リーダーの方にもおすすめの書籍です。ご興味のある方はぜひご一読を。

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