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Le Creuset French Oven
Le Creuset French Oven / myhsu


ル・クルーゼ」というフランスメーカーの鍋をご存知だろうか。

主婦層に絶大な人気を誇るこの鍋は、数万円もする高級品だ。
なぜこの不景気の中でも高価な鍋が売れるのか。

熱が逃げにくく、焦げにくいのが特徴だが、それに数万円も出す程の価値があるのかは疑問が残る。
使いやすいのかと言われれば、むしろとても重くて力のない女性には少々扱いづらい。

しかし、値段の高さや重さなど気にならないくらいの「どうしても欲しい理由」があるのだ。

ル・クルーゼは鍋として使うだけでなく、飾られることでその価値を発揮する。
中には飾るための食器をわざわざ購入する人もいるそうだ。

主婦の一人はこう語る。

だって、リビングに座ったときキッチンをみて、これがずらりと並んでいたら、幸せっていう感じがするじゃない


そう、ル・クルーゼは単なる鍋を売っているのではなく、飾ることによって生まれる「幸せな空間」を売っているのだ。

私も結婚の記念に知り合いから頂いたのだが、箱を開けた時の妻の喜びようは今でも覚えている。
ル・クルーゼを使った料理の時は食卓が華やぐ。
普通の鍋がそのまま食卓の上に置かれるとなんだか無機質でそっけないが、ル・クルーゼだと料理もおいしく見えるし雰囲気も明るくなってしまうのだ。


これらの現象を見て、

「ああ、デザインが良い商品はやっぱり売れるよね」
「鍋に数万円も出すなんて珍しいひともいるもんだ」

と思ったのなら、本質を見れていない可能性がある。


これらの現象は新しい消費社会の到来を意味している。
今回は小阪裕司氏の「心の時代」にモノを売る方法を参照し、消費社会の変化についてご紹介したいと思う。


「胃袋」から「舌」、そして「頭」へ


食品経済の観点から食の消費の推移を見ると、単に胃袋を満たす時代から、舌で味わう時代へと移行し、現在は頭で楽しむ段階に移行している


食料が満足になかった戦後の日本では、胃袋を満たすことが第一の目的であった。
食料が行き届くようになるとやがて、よりおいしい食事を追い求めていくようになった。

そして現代はこうだ。

頭で楽しむ今の時代になると、これはどこで採れたものだろうか、どんな人が作っているものだろうといったことなどが、食べることに関わってくる。


ワインで言えばどこ産のぶどうを使っているのか、どの年に収穫されたものなのかが重要な指標となり、野菜にしても地元の農家が作ったという情報が買う判断に影響を及ぼしたりする。
これは現代ならではの消費傾向なのだ。


「所有権の移転」から「体験の取引」へ


「何を価値と感じるか」については面白い調査データがある。
内閣府「国民生活に関する世論調査」を見ると、昭和54年で「物の豊かさ」より「心の豊かさ」に価値を感じる人が多くなり、年々その差は開いていっている。

マイカー、大型テレビ、ブランドバッグ等、昔は「何を所有しているか」に価値を感じ、それが幸せにつながっていた。
しかし現代では「心を豊かにしてくれる体験」が幸せに結びついているのだ。


需要の創造


大量生産大量消費の時代は終わり、誰もが欲しがる共通の需要、必需品の考えは崩れ去った。
現代においては需要を創造していく必要がある。

その成功例の一つが、心が豊かになる床材「ライブナチュラル」である。

月に1万坪売れれば上々と言われる業界で、なんと月間10万坪を売っているというのだから驚きだ。
フローリングといえば、色と坪単価が訴求点となる。しかしライブナチュラルでは「木味を愉しむ」という事をウリにしている。

自然が創り出したみずみずしい木肌や鮮やかな木目、熟練工の手を加えることで、美しい意匠を愉しんでいただけます。


ライブナチュラルの木材にはシュガーマーク、バーズアイ、バークポケット等といった様々な種類の模様が木に現れている。
例えばバークポケットとは、キツツキが木を突いて傷がつき、それを木が自分自身で癒した跡だ。

これは昔は「不良品」として扱われていた。
それをライブナチュラルは木味を愉しむための趣として売り出すことに成功したのだ。
顧客はなんの傷跡もない木材ではなく、キツツキが傷をつけた木材を好んで買い求める。

このような需要はアンケートを取ったところで分かるはずもない、需要のないところに需要を作って大ヒットさせたライブナチュラルの戦略には、学ぶべきところがたくさんあるだろう。




モノが売れなくなった背景にはもちろん不景気という要因もあるが、このような消費動向の変化も大きく関係している。
この動向を理解していないと、これから企業として存続していくことは難しいだろう。


大阪に今春誕生する「グランフロント大阪」には、266店舗ものショップやレストランが並ぶという。
そして特徴的なのが、ショップでは商品単体だけでなく「ライフスタイルを売る」ということをコンセプトにするということだ。

化粧品メーカーが化粧品だけを売るのではなく、家具メーカーが家具だけを売るのではなく、ブランドが思い描いている「ライフスタイル」を売り出すのだ。
これは明らかに今の消費動向を考えての戦略に違いない。
これが実現すれば日本最大級の「心の豊かさ」を売るショッピングモールになるだろう。

大阪府民として心がワクワクするとともに、財布の心配を気にするばかりである。

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