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モノを選ぶ時、あなたは広告を信じるだろうか?それとも友達の推薦を信じるだろうか?

2012年4月にニールセンが発表した「広告の信頼度調査」によると、世界の消費者の92%は、広告よりも、友人や家族のおススメを信頼している。
さらにこの数値は、2007年の調査から18%も増えた。

友人や家族おススメに次いで2番目に消費者が信頼しているのは、「消費者によるレビュー」で、その割合は実に70%に達した。
こちらも2007年から15%増加している。

一方、マス広告へ目を向けると、世界の消費者の約半分(47%)がテレビ広告、雑誌広告、新聞広告を信頼すると回答しているが、2009年から2011年の2年間で、信頼度はそれぞれ24%、20%、25%ずつも下がっているのだ。

これはアンバサダー・マーケティングのまえがきで述べられていることである。

つまり、消費者は広告ではなく口コミを信頼するようになってきている。
そのような状況の中、今まで通りマスメディアやインターネット上の広告ばかりに資金をつぎ込むのは得策ではない。

あなたの商品を他人に薦めたくてウズウズしている人(アンバサダー)を見つけ出し、そのアンバサダー達と一緒にマーケティング活動をするための方法を紐解いていこう。


概要


もう広告は効かない。売りたいなら、アンバサダーを探し出せ!
スターバックス、フォーシーズンズ、フォード、ヴァージン―業績を伸ばしている企業はすでに始めているソーシャルネット時代の新手法。


著者略歴


ロブ・フュジェッタ
アンバサダー・マーケティングのパイオニア、ズーベランスの創業者兼最高経営責任者(CEO)。
米アップルの成功に貢献した伝説的なマーケティング・コミュニケーション会社レジス・マッケンナの元パートナー。
2000年6月に上場したジェニュイティを含む3つのベンチャー企業で経営に参画するなど、シリコンバレーで20年にわたって活躍している


目次


第1部 アンバサダーを理解する
(そもそもアンバサダーってなんだ?アンバサダーの影響力は千差万別 ほか)
第2部 アンバサダー・マーケティングの威力
(アンバサダーに協力を仰ぐ―独創的なアプローチ)
第3部 業界を越えて広がるアンバサダー
(アンバサダーがいれば洗剤は売れる、クチコミが成功のかくし味 ほか)
第4部 アンバサダー・マーケティング虎の巻
(アンバサダー・マーケティング虎の巻―概要発掘 ほか)
第5部 アンバサダー・プログラム実践編
(アンバサダー・プログラムを立ち上げる、CMO(そしてすべてのマーケター)への手紙)


ポイント


・アンバサダー・マーケティング 五つのポイント

1 アンバサダーに報酬を支払わない
アンバサダーにブランドや商品を推奨してもらうのに、金銭的報酬やインセンティブを提供するのはやめよう。
それは本物の推奨とはいえず、裏目に出る可能性がある。(中略)

2 アンバサダーの手間を省く
アンバサダーが簡単にレビューや体験談を書いたり、プロモーションの情報やコンテンツをシェアしたり、それ以外の方法でもブランドや商品を推奨できたりするツールを提供しよう。(中略)

3 アンバサダーの発掘・活性化は継続的に
アンバサダーマーケティングは一時的なキャンペーンやイベントではない。戦略的で持続性のあるマーケティング手法だ。

4 アンバサダーの意見に耳を傾け、やる気を引き出す
(中略)アンバサダーの意見に耳を傾け、アイデアを求め、最も価値のある顧客である彼らとの関係を深めることが大切だ。

5 結果を追跡し、最適化する
分析ツールを活用し、アンバサダー・プログラムの効果を計測しよう。

アンバサダーマーケティングを進めていく上でのポイントがここに凝縮されている。
広告でのアプローチと違ってすぐに成果が見えず、長期的にじっくりと取り組んでいかなければならない。
目標をしっかりと定め、効果分析をしていかないと途中で挫折することになるだろう。
さらに詳細なプロセスについては本書27章をご覧いただきたい。


・アンバサダーを発掘する三つの方法

1 直接聞く
一つ目の方法は顧客ロイヤリティ(忠誠度)を測る「究極の質問」をすることだ。
「当社を友人に強く薦めようと思いますか?0から10までの数字でお答えください」である。9もしくは10(強く薦める)と答えた顧客はアンバサダーと見ていいだろう。

2 傾聴する
ツイッターなどのソーシャル・メディアでの発言をモニタリングすることで、アンバサダーを発掘できる。(中略)

3 観察する
顧客の行動を観察するのも、アンバサダーの発掘につながる。
たとえば見込み客を紹介したり、商品を褒めるような動画を作成してユーチューブにアップしたりする顧客は、アンバサダーであることを行動で示しているといえる。

ここで出てきた「究極の質問」は顧客ロイヤリティの権威であるフレッド・ライクヘルド氏が考案したものだ。
アンバサダーマーケティングを取り入れている多くの企業がこの究極の質問を用いてアンバサダーを発掘している。


・アンバサダーを増やすための5カ条と効果的(そして衝撃的)な方法

1 ”ヤバいぐらい最高の製品
“ヤバいぐらい最高(insanely great)は故スティーブ・ジョブズの名言の一つだ。ありきたりの商品やサービスを熱心におススメする人などまずいないだろう。(中略)

2 記憶に残るサービス
同じような商品やサービスがあふれている今日、サービスは強力な差別化要因となる。(中略)

3 ”良い利益”を得る努力をする
悪い利益とは、例えば詐欺のような価格設定、顧客サービスのカット、隠れた費用を顧客に押し付けることで得た利益のことだ。(中略)

4 コストが増えても正しいことをする
余計な費用がかからなければ、企業は進んで正しいことをしようとする。
だが、正しいことをするとコスト増につながる場合は、安易な道を選ぶ企業が多い。
しかし、たとえばレモン一個の返品を認めるとコストが増えるとしても、認めたほうがいい。それによって批判社を作ってしまうよりはるかにましだ。(中略)

5 社会的良心を持つ(持っていなければ早いうちに身につけよう)
社会的良心のある企業やブランドのほうが、おススメされる可能性は高い。
ナイキは労働者を低賃金で働かせていたことが明らかになったため、アンバサダーに見放されてしまった。
社会的問題に対して良心的な立場を取ったり、コミュニティに利益を還元したりしよう。(中略)

最後にアンバサダーを増やすための、衝撃的な方法を紹介しよう。批判者と手を切るのだ。「常に万人を満足させることはできない」からだ。

「マーケティング」と名がつくものの、マーケターだけでは解決できない事も多い。
ヤバいぐらい最高の製品はデザイナーや技術者の努力が必要不可欠、記憶に残るサービスにはカスタマーサポートの力も必要だろう。
良い利益や、良心を持って正しいことをしていくには、経営者の強い意思が必要だ。
マーケターは旗振り役となって、各部門の意識を合わせ、アンバサダーを増やすための努力をしていく必要がある。


感想


アンバサダーマーケティングはそこまで新しい概念ではない。
顧客が力を持ち、マーケティングに大きな影響を持つようになったことはアドボカシー・マーケティングや、コトラーのマーケティング3.0でも述べられている。

この本の特徴は、アンバサダーマーケティングをやるにあたってかなり具体的な施策が紹介されていることだ。
やろうと思えばすぐにでもアクションを起こすことができる。

しかし、気がかりなのは紹介されている事例がほとんど海外のものだということだ。
文化の違いがあるので、日本で成功させるためにはある程度の工夫が必要だろう。

アンバサダーマーケティングの国内での事例といえば、まず思い浮かぶのは「ネスカフェアンバサダー」ではないだろうか。
ネスカフェアンバサダーに登録すると、コーヒーメーカーを無料で手に入れる事ができる。さらには特別なプレゼントが抽選で当たったり、アンバサダーが集結するイベントにも参加することができるようになる。
そのかわり、毎月コーヒーメーカーを使っている風景の写真を投稿したり、アンケートに答える必要がある。
本書で紹介しているアンバサダーマーケティングと若干やり方は異なるが、カスタマーサポートに商品についての質問を送ったところ、最後に「アンケートへのご協力をお願いします」と、例の「究極の質問」が返ってきたのだから意識しているのは間違いないだろう。

今後は日本での事例ももっと増えてくるのかもしれない。そうなると広告はなくなりはしないだろうが、次第に減っていくに違いない。
どこにでも出てくる広告にうんざりしている顧客にとっては嬉しいことだし、マーケターにとっては顧客とより良い関係を築くチャンスだ。

そのような未来に備えるため、マーケティングに関わる全ての方々にこの本をお薦めしたい。

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